マイクロLEDの特徴と課題は?市場は大きい?アップルウォッチ?

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液晶が普及し、最近は有機EL(OLED)がiPhoneなどのスマホや大型テレビにも普及し始めています。日本の大手電機メーカーが急速な液晶の価格低下で業績不振に苦しみ、その強力な競合メーカーであったサムスン、LGでさえ、中国勢の猛追により液晶事業の先行きが厳しくなっています。そのため次世代ディスプレイとしてOLEDに投資し、それが花開きつつあります。

日本メーカーでは、大手電機メーカーのOLED部門を統合したJOLEDが、必死でOLED事業で追随しようとしています。

そんな競争熾烈なディスプレイ産業において、現在、多くの専門家・関係者が脅威を感じているのがマイクロLEDです。アップルウォッチにも搭載されるのではないかとの噂もあり、注目されているマイクロLEDについて以下に解説します。

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マイクロLEDとは?

マイクロLEDとは、簡単にいうとLED(発光ダイオード light emitting diode)を小さくしたものです。発光する部分が100ミクロン(=0.1mm)以下のサイズになります。

この小さなLEDを敷き詰めて、画像が表示できるようにしたものが「マイクロLEDディスプレイ」です。液晶ディスプレイやOLEDディスプレイでも、多くの画素が並べられていて、画素を正しく発光させたり、消したり、明るさを調節することで画像が表示されますが、その一つ一つの画素が小さなLED素子からなっているわけです。

通常のディスプレイでは、赤・青・緑の画素(サブピクセル)を近接して並べて一つの画素(ピクセル)を形成しています。マイクロLEDの場合も、赤・青・緑のLED素子を並べて一つの画素を形成します。

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マイクロLEDの特徴は?

マイクロLEDを使用したディスプレイは、ソニーが米国ラスベガスで開催された「2012 International CES」において「Crystal LED Display」として参考展示しました。これは55型でフルHD解像度(1920×1080ピクセル)のディスプレイで、つまり横方向と縦方向にそれぞれ1920個、1080個の画素分のLED素子を並べたものです。赤・青・緑のサブピクセルで考えればその3倍の個数です。

この展示で高コントラスト、広色域、高速動画応答性能、広視野角の理想的なディスプレイであることが実証され、ディスプレイ業界に衝撃を与えました。

液晶ディスプレイは、OLEDに比べるとコントラストが低く、原理的に高速動画応答性能も劣ります。OLEDは液晶ディスプレイに比べると視野角が狭く(*画像が見えないという意味ではなく、正面と斜めで色が変わるカラーシフトが大きい)、寿命が短く、輝度を高くすると焼き付きが起こりやすいという特徴があります。

このように液晶ディスプレイとOLEDは長所・短所があるのですが、マイクロLEDディスプレイには短所と呼べるようなディスプレイの性能面での欠点が見当たりません。

耐久性の高い無機物質からなるLED素子でできているので、LED照明と同様に寿命が長く、応答性も高く、コントラストも極限に近いほど高いです。発光するLED素子を直接見ることになるので、視野角も広く、偏光板などの光を半減させる光学フィルムも必要とせず、最も高効率です。液晶ディスプレイもOLEDディスプレイも偏光板で約半分の光を失っているからです。

このような特徴を、ディスプレイ業界の専門家・関係者であれば構造・原理を聞いただけですぐに理解できますし、実際、それがソニーの展示によって実証されましたので、業界に衝撃を与えたわけです。

つまり、「マイクロLEDディスプレイが本格的に普及したら、液晶ディスプレイもOLEDディスプレイも駆逐されてしまうのではないか?」という脅威を多くの人が感じました。


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マイクロLEDの課題は?

「2012 International CES」でのソニーの衝撃のマイクロLEDディスプレイの展示以降、しばらくはマイクロLEDディスプレイの話題は影を潜めていました。フルHDでも1920×1080ピクセル、4Kならばその4倍、8Kならばその16倍の画素が必要で、その膨大な個数の小さなLEDを作り、並べる製造工程に膨大なコストがかかることに多くの人が気がついたからです。

「これほど液晶ディスプレイの価格が下がったのに、そんなに製造コストのかかるディスプレイは、どんなに性能が高くても普及しないだろう」と多くの人が考えたわけです。

ところがソニーは研究開発を続け、2016年5月にマイクロLEDディスプレイ技術を使った大型のディスプレイ「CLEDIS」(クレディス)を発表しました。これは403×453mm、解像度は320×360ピクセルのディスプレイユニットを配列させて、大型のディスプレイを作るというコンセプトのシステムです。144個並べれば横9.7m、縦2.7mの巨大な8K2Kディスプレイを作ることができます。

2017年から発売を開始し、価格は220型の4K×2Kシステムで約1.2億円と言われています(*正確な価格はソニーにお問い合わせ下さい)。ディスプレイ事業を長年リストラしてきたソニーが新たに立ち上げた事業ですので、この価格で利益が出ると思われます。

実はこのような大型のディスプレイは、業務用途で需要があり、通常はスクリーンに大型プロジェクターで投影するタイプです。そのシステムもかなり高額と思われますが、プロジェクターに比べるとLEDディスプレイは圧倒的に画質が良く、明るく、また小さなディスプレイユニットを搬入して現場で組み立てられるという点も大きな長所です。大型のプレート状のスクリーンでは、搬入経路で大きさが制限されてしまうからです。

ソニーが開発を続け、「CLEDIS」を商品化したことで再び業界に衝撃を与えました。それは製品化して、製造・販売を続けられれば製造コストが下がってくることは歴史が証明しているからです。製造コストをある水準まで下げれば、マイクロディスプレイが製品レベルで見ても「究極のディスプレイ」になる可能性があります。

マイクロLEDディスプレイでサムスンが追随

業界に大きな衝撃を与えたソニーのマイクロLEDディスプレイ。現在、ディスプレイ業界トップの韓国サムスンが黙って見ているはずは無く、早速、追随して研究開発を進めました。すでに406インチ・4Kのシネマスクリーンとして韓国内の映画館に納入されています。

さらに米国ラスベガスで開催された「2018 International CES」において、サムスンは146インチ・4KのマイクロLEDディスプレイを「The Wall」という名称で展示し、同社のマイクロLEDディスプレイへの取り組みをアピールしました。大型テレビ用には韓国LGが有機EL(OLED)に注力しているのに対し、サムスンは有機ELの大型化を断念したこともあり、将来はマイクロLEDディスプレイに注力していくものと見られています。

日本経済新聞(朝刊、2018年4月14日)によれば、サムスンは2018年後半に88インチ以上の大型マイクロLEDディスプレイを3000万円前後の価格で発売する見込みです。主に北米や中東の富裕層向けにプロジェクター市場の代替を狙うとのことです。

マイクロLEDディスプレイの価格は下がるか?

マイクロLEDディスプレイは、製造コストを下げることが最大の課題です。多くの製品の経験則から言えることですが、まずは製品が発売開始となり、継続して売り続けることができれば、通常は価格が下がっていくものです。その観点からは、まずはソニーが220型の4K×2Kシステムを約1.2億円(*報道等による推測価格です。正確な価格はソニーのお問い合わせください)で
、発売を開始したことは大きいです。

そしてサムスンの記事で報道されている「88インチ以上の大型マイクロLEDディスプレイを3000万円前後の価格」。スペックが分かりませんが、サイズと用途から考えて少なくとも4Kの解像度ではないかと思います。ソニーの価格から考えても、これだけの期間でかなり価格が下がった感があります。

直接的な比較にはなりませんが、例えばシャープは2015年10月30日に業務用の85型の8K液晶ディスプレイ「LV-85001」を実売価格1,600万円で発売しました。2017年6月30日に業務用の70型の8K液晶ディスプレイ「LV-70002」を800万円、2018年12月1日に世界初の8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K LC-70X500」を約100万円で発売しました。8Kの液晶テレビとは部材構成もコスト構造も異なりますが、「88インチ以上で3000万円前後」という価格設定は5-6年で1000万円以下が視野に入りそうな出発点です。用途的にはテレビよりもプロジェクターが最も影響を受けそうです。

マイクロLEDディスプレイと有機ELはどちらもLED

電圧をかけると電流が流れ、発光する半導体が「発光ダイオード」です。発光ダイオードを英語ではLight Emitting Diodeと言い、その略号がLEDです。

「発光ダイオード」Wikipedia によれば、以下のように赤、緑、青のLEDが発明されています。

1962年、ニック・ホロニアックにより発明された。発明当時は赤色のみだった。1972年にジョージ・クラフォードによって黄緑色LEDが発明された。1990年代初め、赤崎勇、天野浩、中村修二らによって、窒化ガリウムによる青色LEDの半導体が発明された。

通常、単に「LED」と言う場合は、無機化合物の半導体から成るものを指します。マイクロLEDはその名の通り「小さなLED」で、それを画素として並べてマイクロLEDディスプレイが作製されます。

ある種の物質に電圧をかけて電流を流すと発光する現象のことを「エレクトロルミネッセンス Electroluminescence」と言い、特に有機化合物から成る発光ダイオードの発光のことを、有機エレクトロルミネッセンス Organic Electro-Luminescenceと言います。

そのため日本では有機化合物からなる発光ダイオードのことを慣習的に有機ELと呼んでいます。海外では有機ELのことをOrganic Light Emitting Diode (OLED)と呼ぶのが普通です。

つまり、マイクロLEDディスプレイと有機ELはどちらもLEDなんです。

マイクロLEDディスプレイと有機ELの構造

テレビ、スマホ、パソコンなどに搭載されている発光して画像を表示するディスプレイは、原理的には細かな画素を並べて、それらを点滅あるいは調光して画像を形成します。一つ一つの画素(ピクセル)は、赤・緑・青に光るサブ画素(サブピクセル)から成っています。

赤・緑・青の光を混ぜると白色になること、混ぜ合わせる比率を調整することで様々な色を作り出せることは、「光の混色(加法混色)」として知られ、赤・緑・青を光の三原色と呼ばれていることはご存知かと思います。

三原色で発光するマイクロLEDを画素として敷き詰めたものがマイクロLEDディスプレイで、有機ELを同様に敷き詰めたもので有機ELディスプレイです。

現在、市販されている有機ELディスプレイの構造は、大別すると2つのタイプに分けられます。一つ目はiPhone Xに搭載されているような、三原色のサブピクセルを塗り分けることによって製造されているものです。もう一つは大型テレビに搭載されているような、三原色の層を積み重ねて白色に発光させ、その上に三原色のサブピクセルに相当する位置にカラーフィルターを形成したものです。

ちなみに三原色の層を積み重ねて白色に発光するようにした有機ELは、そのまま白色照明としても利用されています。

マイクロLEDディスプレイと有機ELの違い

ここまでに述べてきましたように、マイクロLEDディスプレイと有機ELはいずれもLEDであり、似たような性質を持っています。実際、三原色を塗り分けたタイプの有機ELディスプレイは、原理的にはマイクロLEDディスプレイと呼んでも良いように思います。

しかし、ディスプレイの分野では決して有機ELディスプレイのことをマイクロLEDディスプレイとは呼びません。あくまでも無機化合物から形成されている小さな発光ダイオードから作られたものをマイクロLEDと呼びます。前述のように単に「LED」と言えば無機化合物の発光ダイオードを意味することと同じです。

有機ELディスプレイのことを「マイクロLEDディスプレイと呼んではいけない」と誰かが指示していると言う話は聞いたことはありませんが、以下のような理由が推測されます。

1.有機ELディスプレイはすでに本格的な普及期に入っており、これまで有機EL(英語でOLED)と呼んでいたものを別の呼び方に変更すると混乱が生じる。

2.次世代のディスプレイとしてマイクロLEDディスプレイを研究開発をしている人々にとっては、「全く新しいディスプレイ」としてアピールしたいですし、実際、性能も全く違う。

3.単に「LED」と言えば無機化合物から成る発光ダイオードを意味する。

ディスプレイとしての有機ELの最大のウィークポイントは、有機化合物であるために明るく発光させると劣化しやすく、寿命が短く成ることです。そのため明るさ(輝度)を抑えめにする、同じ画像を長時間表示し続けないなどの配慮が必要となります。

ところがマイクロLEDディスプレイはそのようなウィークポイントはありません。照明に使われるLEDが長寿命であ理、明るい(輝度が高い)ことからもわかりますように、高輝度・高コントラスト・長寿命の究極のディスプレイとなると期待されています。

まとめ

「究極のディスプレイ」であるマイクロLEDを使ったディスプレイが登場しています。小型のマイクロLEDディスプレイがいつ製品化されるのか、注目が集まっています。製品化に成功すれば、そこから本格的な普及が始まる可能性が高そうです。

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