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有機ELにポリイミドフィルムの基板が使われ始めている!

投稿日:2018年3月6日 更新日:

韓国のSamsungが同社のスマホであるGalaxyに有機ELを使用していますが、昨年、AppleがiPhone Xに有機ELを採用したことから、ディスプレイ分野で大きな注目を集めています。またLGが有機EL(OLED)の大型テレビの販売に力を入れ、ソニー、パナソニック、東芝などの日本の主要メーカーがLGから購入した有機ELパネルでテレビを作り、販売を開始したことから、いよいよ有機ELがディスプレイの主役になっていくのではないかとの期待も出ているようです。

そして有機ELの基板として、ポリイミドが使用され始めていることが報道されています。ポリイミドとは何でしょうか?以下に解説します。

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有機ELの基板に使われているポリイミドとは?

ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称です。高分子は、一般にモノマーと呼ばれる低分子量の有機化合物が、多数化学反応して結合し、高分子量の有機化合物になったものです。モノマーに対してポリマーとも呼ばれます。特定のモノマーが多数化学反応してつながっていくため、ある特定の化学構造の単位が繰り返し高分子中に含まれることとなります。そのためこの単位のことを繰り返し単位と言い、ポリイミドの場合はその中にイミド結合が含まれるということです。

ポリイミドは、数ある高分子の中で最高レベルの高い耐熱性、強い機械強度、化学的な安定性を有しています。

2010年に、独立行政法人宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)および月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC/JAXA)が開発した小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の「太陽帆」に使用されたのもポリイミドで、宇宙空間という極めて過酷な環境下で、さらに失敗が許されない実証機の打ち上げという場面で使用されたことからも話題となりました。

有機ELの基板になぜポリイミドが使われるのか?

有機ELには、もともとガラスの基板が使用されており、実際、LGの有機EL大型テレビにはガラス基板が使用されています。ところがAppleのiPhone Xにはポリイミドフィルムの基板が使われました。さらにポリイミドフィルム基板を使用した有機ELが増えていく見込みです。なぜポリイミドフィルムの基板の採用が増えていくのでしょうか?

ポリイミドフィルムのガラスと比べた長所は、軽く、薄く、丈夫で曲げられるという特性にあります。iPhone Xなどのようなスマホの場合、コンパクトなボディの中に基板を収納しなければいけませんので、軽く、薄いという長所が非常に魅力があります。さらにスマホは注意して使っていても、誤って落とすことがありますので、衝撃を与えても破損しにくい「丈夫で曲げられる」という特性も活きてきます。

しかし、少し視点を変えてみると、有機ELの液晶との差別化というポイントが見えてきます。液晶は、現在では圧倒的にディスプレイの主流で、ディスプレイとしての性能も高く、価格も安くなりましたのでまだしばらくはディスプレイの中でのその地位は揺るがないでしょう。そのような状況で有機ELの採用を広げていくためには、液晶ではできない、有機ELならではの特性をアピールしていく必要があるわけです。

LGの有機ELテレビでは、「黒がしっかり表現でき、コントラストが高い」点が有機ELの特徴としてアピールされています。それは確かにその通りですが、液晶テレビもローカルディミングなどによりダイナミックレンジ高いHDR対応の機種がはついされていますし、高輝度では圧倒的に液晶の方が優れています。また真っ暗な部屋でなく、一般の部屋内のような明るい環境下では画面に照明などが映り込み易く、「真っ黒」も少しグレーに見えるようになります。つまり、「黒がしっかり表現でき、コントラストが高い」だけでは、液晶と差別化していくことが難しいように感じられます。

有機ELの液晶と比較したもう一つのアピールポイントは「曲げられる」という点です。これまでも曲面のディスプレイをテレビや車載用途で研究開発が続けられ、有機ELだけでなく液晶でも多少曲率を持たせたものはできるようになっています。しかし、フレキシブルにユーザーが曲げたり伸ばしたりできるようなもの、曲率が大きく曲げられるものについては液晶では実現できていません。この特性をアピールしていくために、ガラス基板ではなくポリイミドフィルム基板の採用を進めようとしています。

Apple Watchのようなウェアラブルの機器や、画面の折り畳みができるスマホなど、新たな用途への有機ELの展開が期待されています。

有機EL基板に用いるためには、製造工程で高い温度(〜500°C)に耐えられる必要があり、また高温にした時に大きく膨張しない(線膨張係数が低い)特性が必要で、ポリイミド以外の高分子はほぼ使える可能性がありません。このこともポリイミドが注目される理由です。


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有機ELの基板に使われるポリイミドのメーカーは?

Samsung、LGなどの韓国メーカーが有機ELの分野では大きなシェアを持っています。さらに中国では新しい有機ELの製造ラインが立ち上がろうとしています。日本ではJOLEDが有機ELの事業化を目指していますが、現状では有機ELのほとんどは海外メーカーが作っています。

しかし、有機ELの基板に使うポリイミドについては、ほとんどが日本メーカーが供給しています。Samsungへポリイミドを供給しているのは、Samsungと宇部興産の合弁会社であるSUマテリアルスです。LGへはカネカがポリイミドを供給しています。その他、東洋紡、東レ・デュポン、三菱ガス化学などがポリイミド製品化しており、活発な活動をしています。

海外で有機ELが生産されれば、日本のポリイミドメーカーの売り上げるが伸びるという業界構造になっていることは、日本にとっては幸いです。改めて日本の材料技術のレベルの高さを実感します。

まとめ

有機ELの基板に採用が進んでいるポリイミドフィルムについて紹介しました。テレビ、スマホ以外の色々なところに有機ELが使われる時代も近そうです。

有機テレビについては、こちらの記事「有機ELのまとめ」をご覧ください。

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