液晶テレビはかなり価格が下がり、ソニー、パナソニックなどの日本の家電メーカーも、自社のテレビのラインアップのハイエンドに有機ELテレビをそろえています。それらのテレビ用の有機EL(OLED)パネルは、韓国のLG Display製のものが使用されています。
スマホもハイエンドのものは有機ELにシフトしました。スマホ用の有機ELパネルは、韓国のSamsung Display製のものがトップシェアです。
有機ELでは日本企業はどうなのでしょうか?
*2020年モデルの有機ELテレビでもっとも注目されているのが、QD-OLEDを搭載したSONYのA95Kシリーズです。
有機ELで日本企業は敗北なのか?テレビ・スマホ・パネル
有機ELテレビ・パネルの日本メーカーは?
世界初の有機ELテレビは、ソニーが2007年に発売しました。トップエミッションの優れた画質で、有機ELパネルも自社で研究開発し、製造していました。
しかし、その後、ソニーは有機ELパネルの開発部門を切り離し、パナソニックが切り離したの同部門と統合し、株式会社JOLEDとなりました。
つまり、ソニー(SONY)は有機ELパネルの製造からは撤退したわけです。パナソニックについても同様です。現在、日本で販売されている有機ELテレビのパネルは、韓国LG Displayから供給を受けています。
テレビ用大型有機ELパネルの世界シェアの9割以上をLG Displayが占めていますので、ほとんどのテレビメーカーがLGから有機ELパネルを購入しています。
有機ELテレビは日本メーカーも販売していますが、有機ELパネルについては日本企業は敗北したのでしょうか?
日本で唯一残っているのが前述のJOLEDですが、投資の規模が韓国勢・中国勢と比べて桁違いに少なく、テレビ用途で正面から勝負するのは避け、中小型に絞っています。テレビ用大型パネルについて、中国のTCLへライセンス・技術供与することで、大きな投資をせずに進めていきます。まだ全滅したわけではありませんが、かなり厳しい状況です。
前述のようなソニーとパナソニックの有機ELパネルの研究開発の経験は、決して無駄となったわけではありません。有機ELパネルについての深い知識・経験を持っていますので、それを活用してLG Displayとそれぞれソニー向けあるいはパナソニック向けの特別な有機ELパネルの共同開発を進めています。
そのようないわゆる特注品の有機ELパネルは、最終製品のテレビの性能の差に直結しますので、ライバルメーカーよりも優れた有機ELテレビの発売につながります。
有機ELスマホ・パネルの日本メーカーは?
AppleがiPhone Xに有機ELパネルを採用してから、ハイエンドスマホには有機ELが広く搭載されるようになりました。Appleよりもかなり前から、韓国サムスンが自社のスマホのGalaxyに有機ELパネルを搭載しており、その有機ELパネルをサムスングループで開発していました。
そのためスマホ用有機ELパネルでは、技術・量産技術・実績の点で圧倒的にサムスンが強く、8割以上の世界シェアを持っています。
日本メーカーでは、ジャパンディスプレイ(JDI)が技術を蓄積しており、Appleと協議しているとの報道がありましたが、まだ実績がありません。前述のJOLEDは、印刷方式の有機ELパネルに特化しており、中型パネルをターゲットとしているため、現状ではスマホ用の有機ELパネルの量産は計画していないようです。
鴻海精密工業傘下のシャープは、自社のスマホのアクオスに自社開発した有機ELパネルを搭載しています。
有機ELで日本企業は製造装置が強い!装置メーカーに注目!
有機ELパネル事業は、残念ながら日本企業は危機的な状況ですが、有機ELに関する分野で圧倒的に強い日本企業があります。例えば製造装置では、キヤノントッキが圧倒的なシェアを誇っています。ライバル企業も必死の追い上げをしていますが、最先端の第6世代用蒸着装置ではほぼ独壇場のようです。
ちなみに蒸着用のメタルマスクでは大日本印刷(DNP)が圧倒的なシェアを持っています。蒸着装置およびメタルマスクは、印刷方式が普及しない限りは使われ続けるでしょう。
有機ELのバックプレーン用の露光装置では、ニコンがトップです。キヤノンも必死の追い上げを続けており、解像度ではニコンに追いついています。この分野も現在シェアトップだからと言っても安心できませんが、日本メーカーがまだまだ強いです。
有機ELパネルの製造ラインで使われるエキシマレーザーアニール(ELA)装置では、日本製鋼所が70%以上のシェアを持つています。
有機ELで日本企業は材料が強い!化学メーカーに注目!
有機ELの材料についても強い日本メーカーがあります。
有機ELの発光材料
有機ELの心臓部である発光材料は、出光興産がLG向けでトップシェアです。その他、住友化学、新日鉄住金化学、保土谷化学工業、日産化学、JNCなど多くの日本企業が優れた発光材料を供給しており、まさに日本企業無しでは有機ELは光りません。
有機ELのポリイミド(PI)基板
最近、フレキシブル基板を使用した有機ELの開発が進んでいますが、その基板にはポリイミド(PI)が用いられています。
高性能のPIは日本企業が得意で、韓国のサムスンには宇部興産が供給しています。その他、カネカ、三菱ガス化学、旭化成、三井化学などの日本の化学メーカーが供給しています。
まとめ
有機ELパネルでは日本メーカーが厳しい状況ですが、製造装置や材料では非常に強いことを紹介しました。これらの分野では、簡単には真似できない強みがあるのでしょう。
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