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生分解性プラスチックは海洋汚染防止に役立つのか?

投稿日:2018年11月19日 更新日:

マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となり、生分解性プラスチックへの期待が高まっています。生分解性プラスチックはこれまでにも何度か注目され、ブームが去ると下火になるということがありましたが、今度は本格的に普及するかもしれません。生分解性プラスチックを使えば、本当に海洋汚染を防ぐことができるのでしょうか?

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生分解性プラスチックは海洋汚染防止に役立つのか?

マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となりました。大きなプラスチックが投棄され、それが細かくバラバラになり、肉眼ではよく見えない程度にまで小さな破片となったものがマイクロプラスチックです。以前は歯磨き粉の研磨剤に使用されていた微細なプラスチックのように、環境中に放出される段階ですでにマイクロプラスチックになっているものもあります。家庭で洗濯する時に、衣類の合成繊維がわずかに剥がれ、それが排水とともに下水に入り、最終的に海洋に流れ込むものもあります。海から遠い内陸に住んでいても、ある程度以上の生活水準であれば、地球上のほとんどすべての人がマイクロプラスチックによる海洋汚染に関わっていると考えてよいでしょう。

数年前には、ウミガメや海の水鳥に、海洋に遺棄された釣り糸や漁網などが絡まり、命を奪ってしまったことが写真撮影され、広く世界に配信され話題となりました。それらはマイクロプラスチックではなく、もっと大きなプラスチック製品の残骸です。それらが長い時間をかけてバラバラになり、マイクロプラスチックの発生源になることからも、別々の問題ではないことが分かります。つまり、不法投棄などの何らかの形によって海洋中に放出されたプラスチックの海洋汚染と向き合わないといけないわけです。

そこで生分解性プラスチックに期待がかかるわけです。生分解性プラスチックは、環境中において、微生物と酵素の働きにより最終的に水と二酸化炭素にまで分解されるプラスチックのことです。つまり、海洋に流れ込んだプラスチックが最終的に水と二酸化炭素にまで分解されるのであれば、問題が解決できるのではないかと考えられるからです。

本当に生分解性プラスチックを使えば、プラスチックによる海洋汚染を防ぐことができるのでしょうか?

生分解性プラスチックで海洋で分解するのはどれ?

生分解性プラスチックは、すでにいくつかが製品化され、いくつかの分野で使用され始めています。例えば農業用のマルチシートでは、生分解性プラスチックで作られたものがあります。マルチシートとは、畑の畝などにかぶせて使用するプラスチックのシートで、非常に広い面積を覆うために地表に置かれます。それを後で回収するのは大変なので、そのまま分解されれば回収の手間がかからなくなり便利です。すべての生分解性プラスチックに言えることですが、そのプラスチック製品を使用するということは、必要な期間は強度等の特性を維持し、不要になってから自然に分解することが求められます。そのような都合のよい特性を実現するには、分解にかかわる微生物の存在や温度・湿度など諸条件に適したものを使用する必要があります。前述の農業用マルチシートは、畑で使用した際に数カ月後に分解するような特性となるように作られています。

ここが注目すべきポイントです。つまり、海洋汚染防止に役立つ生分解性プラスチックは、そのプラスチック製品を使用している間は必要な特性を維持し、海洋に流れ込んだ後に、ある程度の時間内に分解することが求められます。工業製品の多くに言えることですが、各メーカーがバラバラの定義を使用してしまうと混乱が生じますので、海洋で分解できる生分解性プラスチックの満たすべき特性に規格を定め、その規格を満たしたものに認証を与えています。

株式会社カネカのサイトには、ポリエステル系生分解性プラスチック(商品名:カネカ生分解性ポリマー PHBH)で、海水中で生分解するとの認証「OK Biodegradable MARINE」を取得したことが公表されています。今後、他社の生分解性プラスチックも認証取得への取り組みを進めていくでしょう。海洋汚染を防ぐためには、海洋で分解する生分解性プラスチックを使用するということを理解しておきましょう。


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生分解性プラスチックで海洋汚染を防ぐためには?

プラスチックによる海洋汚染を防ぐには、海洋中で分解する生分解性プラスチックを使用すれば良いのでしょうか?

そもそもの論点であったこの問いに対しては、現状を考えると半分「YES」で半分「NO」と言ったところでしょう。確かに海洋中で分解するプラスチックを使えば、それが海洋中に流れ込んだとしても、やがては分解されて無くなるでしょう。しかし、前述ように海洋中で分解する認証を受けているとは言っても、それは人為的に定められたある条件下での話です。海は広く、海溝部分は非常に深いので、海洋と一言で言っても、あらゆる海が均一なわけではありません。温度だけに注目しても、北極や南極付近は氷山ができるほど低い温度ですし、赤道付近は非常に温度が高いです。水深が浅い部分と深海でも大きく異なります。そのような多様な海洋で、本当にある程度の期間で生分解性プラスチックが分解してくれるのかも検証が必要でしょう。

また不法投棄などのように、そもそも海洋中にプラスチックが流れ込まないようにすることが重要です。「海洋に流れ込んでも分解する」ということをアピールし過ぎると、不法投棄を助長する可能性があります。PETボトルのリサイクルのように、生分解性プラスチックを焼却処分や埋め立て処分をしないようにするには、生分解性プラスチックを分別回収し、分解に適した条件を作ることのできる施設に集め、微生物によって水と二酸化炭素までに分解させるようにする必要があります。現状では、農業用のマルチフィルムのように、使用環境下で生分解性させられるような使い方が望ましいでしょう。海洋では、釣り糸や漁網などのように、当初から海洋中で使用することが想定され、ある程度の確率で海洋中に遺棄される可能性が高いプラスチック製品を、海洋中で分解される生分解性プラスチックで作るべきでしょう。

まとめ

生分解性プラスチックの普及が海洋汚染の防止に役立つがどうかについて紹介しました。そもそもプラスチックが海洋中に流出しないように、ゴミを適切に処理しましょう。

生分解性プラスチックについては、こちらの記事「生分解性プラスチックのまとめ」もご覧ください。

最近、生分解性プラスチックのストローを使う動きもあります。海洋汚染防止に効果があるのでしょうか?こちらの記事「生分解性プラスチックのストローを使えば海洋汚染は防止できる?」で紹介しています。

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