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テニスのガットのテンションでスピンをかけやすいのは?プロは?

テニス

テニスのレベルが上ってくると、一般のプレーヤーでもスピンをかけてボールをコントロールするようになります。ボールのスピードの加減だけでコートに収まるようにすると、試合である程度以上スピードのあるボールを打てなくなってしまうからです。

しっかりラケットを振り切って、ボールをコートに入れるためにスピン量を制御する技術が必要となります。

ボールにスピンをかけるために、ラケットのガットのテンションはいくつに調整すれば良いのでしょうか?以下に解説します。

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テニスのガットのテンションでスピンがかけやすいのは?

テニスのガット(*ストリングとも呼びますが、ここではガットと呼ぶこととします)とスピンの関係は、古くから研究されており、最近もまだ研究が継続されています。この分野で有名なものはHoward Brody氏の著書「Brody, H. (1987) Tennis Science for Tennis Players, University of Pennsylvania Press」などがあり、さらに2004年に「The Physics and Technology of Tennis」が出版されています。

Howard Brody氏の研究が先駆的なものでしたので、同氏の仮説がいつのまにか定説となってしまっている部分もあります。ところが最近は、1980年代から2000頃まではあまり簡単に研究に利用することができなかった高画質の高速度カメラなどが利用しやすくなり、かつては映像で確認できなかったインパクトの瞬間のボールとガットの変形・動きなどが確認できるようになりました。そのためこれまでに定説となってしまっていたことが、いくつか訂正されつつあります。

これは機器の進歩によるところが大きいので、先駆的な研究を行ったHoward Brody氏の業績への敬意は変わりませんが、最先端の正しい知識を整理する必要があり、「古くから言われている十分に検証されていない定説」にとらわれないようにしなければなりません。

最先端の研究で分かってきたのは、「ガットのスナップバック現象がスピン量を増やす」ということです。これはトップスピンなどのスイングでボールをインパクトした瞬間に、ボールがガットに食い込んでつぶれ、ガットがずれます。ボールが元の形に戻って、ラケット面から離れるまでの間に、ずれたガットが元に戻り、その動きによってボールにスピン回転が加わるという現象です。ボールとガットの接触時間は1000分の4秒程度です。

したがって、スナップバック現象が起こりやすいガットほどスピンがかかりやすいと言えます。海外での報道によれば、ガットにシリコンスプレー(潤滑剤)をかけたプロがいたそうです。こうすれば縦と横のガットが滑りやすくなるので、スナップバック現象が起こりやすくなると考えられます。

実際、そのような実験をして確かにスピンがかかりやすくなることが報告されています。シリコンスプレーをつかうことを禁止すべきという主張がありますが、現時点では禁止されていないようです。

ガットのテンションについては、テンションが高い方がインパクト時の変形状態から元に戻る復元力が高く、スピンがかかりやすいです。これは適正な範囲内のテンションの話で、限度を越えて高ければ高いほどスピンがかかるという意味ではありません。極端な話、テンションをどんどん高くするとどこかでラケットが破壊されてしまいますし、そこよりも低いテンションでラケットに深刻なダメージを与えてしまいます。

また新しくガットを張って、そのラケットで試合をすると、縦糸と横糸が食い込んで溝(ノッチ)ができます。そうすると溝ができる前よりはスナップバック現象が起こりにくくなります。ガットのテンションは、張り終えた直後から時間とともに下がり続けることはよく知られています。これはボールを打つ度に下がっていくもので、結局、時間が経つほど、ボールを打つほどスピンがかかりにくくなることを意味します。


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テニスのガットのテンション以外でスピンに効果があるのは?

ガットのテンションとスピンのかかりやすさの関係を上で説明しました。しかし、スピンのかけやすさに影響を与えるのは、ガットのテンションだけではないことも知っておいた方が良いでしょう

例えばラケットのモデルによって、ストリングパターンが異なりますし、ラケットの素材・剛性、ヘッドサイズなども異なります。これらは当然のことながら振り抜きやスピンのかけやすさに影響します。ラケットメーカーごとに、モデルを「スピン」と「パワー」でマッピングするなどして、特徴を説明することが多いので、その中でスピンをかけやすいモデルで試打をしてみると実感できるでしょう。

またガットの素材がスピンのかけやすさに影響することも明らかになっています。通常はナイロンガットよりもポリエステルガットの方が硬く、表面が滑りやすいため、スナップバック現象が起こりやすく、スピンがかかりやすいです。しかし、注意しないといけないのは、ポリエステルガットはガットを張った後に時間の経過とともにテンションが下がりやすいということと、ナイロンガットではスピンがかからないというわけではないということです

トッププロのように、大会中に新しいガットを張ったラケットを何本も用意し、試合中に何本も新しくガットを張ったラケットを使えるならば良いのですが、ガットを張って1〜3ヶ月もそのまま使い続ける一般のテニスプレーヤーの場合は、ポリエステルガットを最高の状態で使えるのは張り上がり後のわずかな期間だけです。比較するとナイロンガットの方がテンションの下がり方が遅いということもあるでしょう。「スピンを打つためにポリエステルガットでなければならない」というような誤解をしない方が賢明です。ナイロンガットでもスピンは打てるからです。

実際のテニスの試合・練習では、ガットのテンションが下がり続けるだけでなく、ボールも時間とともに弾まなくなりますし、表面も起毛してある部分が削れてきます。人によっては、クレーコート、ハードコート、オムニコートでそれぞれテニスすることもあるでしょう。屋外ならば気温と風の影響もあります。そのような状況で、時間とともに変化する要素にも対応し、ボールをコントロールするのがテニスというスポーツと理解した方が良いでしょう。

スピンのかかり方に満足できないならば、ガットのテンションや種類だけで解決しようとするのではなく、スイングを調整した方が近道ですし、上記のような千変万化する状況にも対応力が身につきます。
*テニスのガットの張り替え時期から考えると、どのようなガットがおすすめでしょうか?こちらの記事で紹介しています。

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テニスのガットのテンションをプロはどうしている?

テニスのガットのテンションは、プロでも様々です。1990年代から2000年代前半まで圧倒的な強さを誇ったピート・サンプラス選手は、約80ポンドのテンションでナチュラルガットを張っていました。サンプラスモデルのWilson Pro Staffが販売されていましたが、実際に本人が使用していたのはこのような極めて高いテンションに耐えられるような別物でした。

最近の錦織圭選手のガットのテンションは、かなり低く、36〜40ポンド程度のこともあります。出場する試合の会場の気温・湿度なども考慮して調整していますが、基本的にゆるめのテンションです。

テンションについて昔から言われるのは、「緩く張ると飛びやすく、硬く張ると飛びを抑えられる」というものです。サンプラス選手のような非常に高いテンションについてはデータがありませんが、通常のラケットの適正テンションの範囲内であれば、普通に振り切るスイングをした時にガットの反発係数のテンションによる違いは無いということが明らかになっています。

これはどういうことかと言うと、例えば高い飛び込み台がプールに飛び込む状況を想像していただければ理解しやすいと思います。プールサイドからゆっくり水の中に入る時は「水面の硬さ」を感じることはありません。しかし、高いところからスピードをつけて水面に衝突すると、通常ならば柔らかいものでも固くなり、衝撃が大きくなります。つまり、ある程度のスイングスピードとボールのスピードがあれば、わずかなテンションの差はガットの反発力にはほとんど影響しないということです。反対にほとんどラケットを動かさず、ボールに合わせるような形でボレーする時などは、テンションによる違いが出るでしょう。それはボールスピードが遅くなるほど差が大きくなります。実際の試合などでは、そこまで遅いボール・遅いスイングスピードで打つことはほとんどないでしょう。

現在のプロの多くはポリエステルガットを使っています。前述のようにポリエステルガットのテンションは、張り終えた直後からどんどん下がりますので、何本もラケットを用意し、試合中にも頻繁にラケットを交換します。大会中には何度も新しくガットを張り替えます。(トップ)プロだからできる最高の環境です。

プロだけにガットにもこだわる人が多いですが、ガットですべてを解決するのではなく、状況に応じてボールをコントロールする技術が優れていることを忘れてはいけないでしょう。ある程度コンディションが悪くなったガットでも、それを使って調整する能力があるわけで、一般のテニスプレーヤーもボールを打ちながら調整する技術を磨くようにしたいですね。

まとめ

テニスのガットのテンションとスピンのかけやすさについて解説しました。ガットメーカーの製品にはガット表面に凹凸をつけてスピンがかかりやすくするという設計のものもあります。これは前述のスナップバックのメカニズムから考えると矛盾する気もします。しかし、ガットメーカーもそれぞれ実験を行って効果を確認していると思いますので、最終的な判断は自分で試してみて下すと良いでしょう。

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