Windows 10には「Windows Defender」というセキュリティソフトが標準装備されています。優れた性能という話も聞きますが、Windows Defenderを使えば市販のセキュリティソフトは必要ないのでしょうか?
無料で使用できるのは嬉しいですが、セキュリティソフトですので本当に自分のパソコンをマルウェアなどから守ることができるのか不安を感じますね。
以下にわかりやすく紹介します!
Windows Defenderと市販のセキュリティソフトのどっちを選ぶ?
最初に結論からお話します。
1.Windows Defenderの基本性能は優秀です。パソコンで安全なサイトを閲覧したり、動画を見る程度の使い方でしたら十分な性能を持っています。
2.仕事でパソコンを使用し、重要なファイルと複数の相手とやり取りする方、ネットバンキングやネットショッピングをする方、パソコンのセキュリティ対策に詳しくない方には、市販のセキュリティソフトの使用をおすすめします。
以下、さらに詳しく説明します。
Windows Defenderとは?
Windows Defenderは、マイクロソフト社が開発しているセキュリティソフトで、Windows 8以降のOSに標準でインストールされています。
Windowsのシェアは圧倒的に大きく、それ故にマルウェアのターゲットにされやすく、被害も発生しています。そのためOSに標準装備で提供するようになりました。Windows10 ver.1709以降はセキュリティシリーズの名称になっています。
マルウェア対策用が「Windows Defenderウイルス対策」、パーソナルファイヤーウォールが「Windows Defender Firewall」などと、機能別に複数のセキュリティ対策用ソフトがあり、それら全体をWindows Defenderシリーズと名付けたわけです。少々ややこしいので、以下で必要がない限りはとりあえず「Windows Defender」として一括して記します。
Windows Defenderには主に以下のような機能があります。
リアルタイム保護とファイアウォール
パソコンはいつマルウエアから狙わるかわかりません。マルウエアの攻撃を防ぐために、常にパソコンを監視しています。リアルタイム保護は、ダウンロードするファイルのチェックをします。ファイアウォールは、インターネット経由などで外部からパソコンへの不正アクセスを防ぐ機能です。
スキャン保護
リアルタイム保護で、ファイルをダウンロードする際にチェックしますが、場合によってはすでにパソコンの内部に存在しているファイルに問題がある場合もあります。それらをチェックするためにスキャン保護機能があります。
ファミリーオプション
ペアレントコントロールなどが設定できます。
Windows Defenderの性能
Windows defenderの性能については、第三者機関「AV-Comparatives」が市販のセキュリティソフトと比較しているので、その評価結果を参照してみます。以下のグラフがその結果です(2020年3月の調査結果)。
「Microsoft」と書かれているのがWindows Defenderです。グレーの部分がマルウェアをブロックすることに成功した割合で、赤が防げなかった割合です。黄色はユーザーが不正なサイトなどで自らマルウエアを受け入れてしまった割合です。

グレーの部分が多いほど防御力が高いと考えられます。有料の市販セキュリティソフトであるカスペルスキー(Kaspersky)とマカフィー(MacAfee)に比べるとわずかに防御に失敗した割合が多いですが、トレンドマイクロ(Trend Micro)よりは失敗した割合が少ないです。
このグラフは左側の縦軸をよく見ると、95-100%の範囲で表示していることがわかります。つまり、かなり高い割合でマルウェアを検出できていることがわかります。
このことからもセキュリティソフトを使用すべきと言えるでしょう。後述しますが、セキュリティソフトを入れただけで正常に動作していると勘違いしてしまうこともあります。インストールをしただけでなく、正しく設定して使用することが必要です。
グラフ下部にあるオレンジ色の折れ線グラフは、「マルウエアではないのにマルウエアと判定した割合」です。いわゆるウイルスで言えば「偽陽性」ということです。
これを高くしても良いならば、もっと防御できる確率も高くなりそうですが、それでは問題無いファイルもマルウエアと判定することが多くなってしまうので困ります。カスペルスキーやマカフィーに比べると偽陽性が少ないことも注目です。
トレンドマイクロは、防御できなかった割合が高くなっていますが、偽陽性の割合も少なくなっています。
以上のことからWindows Defenderがかなり優秀であることがわかります。
Windows Defenderよりも市販のセキュリティソフトが優れていること
Windows Defenderは、無償ということを考えると非常に優れた性能です。マイクロソフト社がそもそもWindowsユーザーに対し、このような優れたセキュリティソフトをOSに標準装備で提供するようになったのは、セキュリティソフトを使用しない、あるいは正しく設定して使用していないユーザーが相当数存在し、そのような無防備な状態でマルウエアの被害に遭うことが多かったためです。
実際、Windows Defenderを使用することで、かなりマルウェアの防御に成功していると考えられます。しかし、「なぜセキュリティソフトを使用していなかったのか?」ということを考えると、ユーザーのすべてがマルウェアやパソコンのセキュリティに詳しくないという事実が根本にあるということがわかります。
そのような事情を考慮すると、「誰でも簡単に使える」ということが重要です。そのような観点で比較すると、以下の点で市販のセキュリティソフトは、Windows Defenderよりも親切で優れていると言えます。
迷惑メール対策・ネットバンキング保護などの機能がある
市販のセキュリティソフトは、前述のWindows Defenderの機能のような基本機能のみでなく、迷惑メール対策機能やネットバンク保護機能などがあるものがほとんどです。最近はフィッシングで個人情報が狙われることが多いので、これらの機能まで充実している方がセキュリティが高まります。設定も簡単です。
Windows Defenderで本来の性能を十分に発揮させるには、いくつかの設定が必要です。これもパソコンにかなり詳しい人以外にはハードルが高いです。
未知のウイルスへの防御機能がある
マルウェアは次々に新しいものが登場します。そのためにセキュリティソフトの定義ファイルなども常に新しい情報に更新し、最新の状態を保たなければなりません。市販のセキュリティソフトは、世界中から最新のマルウェアの情報を集め、迅速にそれに対応しています。
しかし、それでも常に新しいマルウェアが発生しますので、未知のマルウェア(ウイルスなど)に何らかの対応をする機能が求められます。市販のセキュリティソフトには、未知のマルウェアを検知し、防御する機能があります。これは大きなメリットです。
サポートが手厚い
市販のセキュリティソフトは、サポートしてくれる窓口があります。実際に体験してみるとわかるのですが、自分のパソコンがウイルスに感染したり、ランサムウェアに乗っ取られたりしたら、ものすごくショックです。その状況からどのように復旧したら良いのかをわからないことが多いので、忙しい時ほど焦ります。
特に新種のマルウェエアであるとその情報も入手しにくいため、何から手を付けたらよいのか、かなり困るでしょう。企業等でネットワーク管理者が居る場合は、そこへ届け出てサポートしてもらうことになりますが、そのような管理者が居ない場合は誰に相談したらよいのかも困ることが多いです。
その点、市販のセキュリティソフトであれば、サポート窓口が利用できます。最新のマルウェアの情報を持っていますし、その対処方法も知見が多いので頼りになります。残念ながらマイクロソフトではWindows Defenderのそのようなサポート窓口がありません。
市販のセキュリティを使う時の注意点
市販のセキュリティソフトを使う時にはいくつかの注意点があります。
市販のセキュリティソフトは1つだけ入れる
1台のパソコンにインストールする市販のセキュリティソフトは、原則として1つです。セキュリティソフト同士がバッティングする可能性がありますので、複数のものを同時に入れることは望ましくないです。セキュリティソフトをインストールする段階で、他のセキュリティソフトがすでに入っていると、それを自動的(あるいは半自動的)にアンインストールするものもあります。
Windows Defenderは、標準で装備されているソフトですので、これが入っている状態で市販のセキュリティソフトをインストールしても大丈夫です。しかし、通常は、市販のセキュリティソフトをセットアップして使用を開始する段階で、Windows Defenderの機能がオフになります。
市販のセキュリティソフトを使うと動作が重くなることがある
セキュリティソフトは、前述のように外部からの攻撃がいつあるのかわかりませんので、常に動作しています。そのためその分パソコンに負荷がかかるのは止むを得ません。
市販のセキュリティソフトごとに差がありますので、まずは体験版を使ってみて、パソコンの動作状況を確認してから購入した方がよいでしょう。比較的軽いソフトとして評判が良いのではカスペルスキーです。しかし、セキュリティソフトも頻繁に定義ファイル等がバージョンアップされますので、やはり体験版で実際に確認することをおすすめします。
Windowsセキュリティで市販のウイルスソフトを確認
Windows Defenderは、Windows 10に標準で装備されています。まず市販のセキュリティソフトをインストールしていない場合は、Windows Defenderが起動し、正常に動作しているのか確認しましょう。
「スタート」をクリック > 「設定」をクリックします。次に表示される「Windowsの設定」の画面で、「更新とセキュリティ」をクリックします。
次に表示される画面で「Windowsセキュリティ」をクリック > 「Windowsセキュリティを開く」をクリックします。
そうすると以下の「セキュリティの概要」の画面が表示されますので、「ウイルスと脅威の防止」のところをチェックしてみましょう。以下のように緑色のチェックマークが付いていて、「操作は不要です」と表示されていればWindows Defenderが有効になっています。


Windows 10のウイルス対策・セキュリティ対策が必要な理由
パソコンを15年以上使用している人にとっては、パソコンのセキュリティ対策と言えば、ウイルス対策のことと考えるかもしれません。現在ほどインターネットが普及していなかった頃は、インターネット経由でのパソコンを狙った悪意ある行為は、現在よりもバリエーションが少なく、身近に脅威を感じるものと言えばウイルスであることが多かったためです。
現時点で知っておいた方が良いパソコンを狙った悪意ある行為について紹介します。
マルウェア
いわゆるウイルスを含む、悪意あるソフトウェア等の総称をマルウェアと呼びます。ウイルスはその名の通り、伝染する機能があるものです。その他に、単体で存在し、自己増殖する「ワーム」や、一見無害なファイルやプログラムがコンピューターに侵入した後に悪意ある振る舞いをする「トロイの木馬」なども有名です。
コンピューターを外部から操るために作られた「バックドア型」、情報収集を主な目的とした「スパイウェア」、パソコンをロックする、データを暗号化するなどして身代金を要求する「ランサムウェア」などもあります。
その他、いろいろな種類がありますが、これらを総称してマルウェアと呼んでいます。
フィッシング詐欺
マルウェアが直接的にパソコンを狙うのに対し、パソコンを介して人を狙う悪意ある行為もあります。典型的なものは、メールを利用したもので、注意を引くような文面で送り、その中にあるリンクをクリックさせて誘導したサイトで個人情報を入力させるようなものがよくあります。
メールそのものには前述のマルウェアのようなプログラムが組み込まれていませんので、迷惑メールフィルター機能などを利用して識別すること、そもそも怪しいメールを見破れるようになることが必要です。Amazonなどの有名なショッピングサイトを語ったり、クロネコヤマトなどの宅急便会社を装うものがあります。
Amazon(アマゾン)のなりすましメールについては、こちらの記事で紹介しています。
標的型メール
ある程度狙いを絞って、相手が警戒なく開けてしまうような文面のメールを送り、添付ファイルを開かせたり、リンクをクリックさせるなどしてマルウェアに感染させるなどを目的としたメールです。かなり巧妙なものが多く、そのようなメールがあると警戒していないとだまされやすいです。ランサムウェアが組み込まれていて、多額の身代金を要求される例があります。
Dos攻撃
特定のサイトへアクセスが集中するとサーバーが対応しきれなくなってダウンしてしまうことがあります。これを狙って、大量のデータを送り、サーバーを攻撃するのが「Dos攻撃」です。パソコンにマルウェアが送り込まれ、乗っ取られてこのDos攻撃に利用されることがあります。知らないうちにサイバー攻撃の加害者になってしまう恐ろしい行為です。
このようにすでに知られているインターネットを介した悪意ある攻撃にはいろいろなものがあります。すべてを覚える必要はありませんが、これらの攻撃からパソコンを守るためにはセキュリティソフトが重要であることは理解しておきましょう。
まとめ
残念ながら世界にはサイバー攻撃をする人々がいます。インターネットは世界中につながっていますので、パソコンでインターネットに接続する以上、常に攻撃を受けるリスクがあります。Windows Defenderや市販のウイルスソフトを活用し、防御しましょう。
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