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量子ドットディスプレイとは?原理・特徴・課題について解説!

投稿日:2018年3月5日 更新日:

液晶ディスプレイはかなり高画質になりましたが、まだまだ研究開発が続けれられ、画質向上が続いています。広色域で色鮮やかなディスプレイとして注目されているのが量子ドットを使用した液晶ディスプレイです。「量子ドット」と言われてもあまり馴染みのない言葉なのでなんだかよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。量子ドットディスプレイについて分かり易く説明します。

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量子ドットディスプレイとは?原理・特徴は?

量子ドットとは、直径数nm~20nmの大きさにした物質(主に半導体など)のことです。量子ドットはいくつかのタイプと用途がありますが、ここではディスプレイに関係のある量子ドットに話を絞ります。

ある種類の半導体は、その半導体固有のバンドギャップがあり、励起光を照射することによって高いエネルギー状態になり、そこから安定な状態に遷移する時に発光します。その時に発せられる光の波長は、バンドギャップにより決まります。発光ダイオードなどの発光波長はこのバンドギャップにより決まっています。

このような半導体を直径数nm~20nmの大きさにすると、電子がその大きさに閉じ込められるためにエネルギー準位が変化し、発光波長が変わり、さらに発光スペクトル幅もシャープになります。また発光波長も量子ドットの大きさを制御することで、ある範囲で調整することができます。ディスプレイでは、青の発光ダイオードの光で励起して、緑および赤の光をそれぞれ発光する量子ドットが用いられます。青は元々の青色LEDの光を利用し、緑と赤については量子ドットからの光を利用するわけです。

ディスプレイでは、赤・緑・青の三原色の光を混合して白色を作り出し、さらにこれらの光強度のバランスを変えることで多くの色を作り出しています。原理的にこれらの三原色の発光スペクトルの幅が狭くなるほど、三原色を調整して作り出すことのできる色数が多くなります。8K・4K放送(スーパーハイビジョン放送)の開始に向けて、その映像信号の全てを生かすために広色域(表示できる色数が多い)ディスプレイの開発が進められています。その有力候補が量子ドットを使った液晶ディスプレイなのです。

液晶ディスプレイは、液晶そのものは発光しない「非発光ディスプレイ」で、液晶パネルの背面に面状に発光するバックライトが配置されています。量子ドットは、液晶ディスプレイのバックライト部分に組み込まれたものがすでに製品化されました。バックライトに組み込むタイプは、大別すると以下の3つのタイプがあります。

1.エッジライト型バックライトの導光板の入光部に量子ドット封入したガラス管を配置するタイプ

2.量子ドットを練りこんだシートをバックライトの出射面上に配置するタイプ

3.青色LEDの発光面上に量子ドットを配置したものを光源として使用するタイプ

さらに学会発表レベルでは、バックライトではなく、液晶パネルのカラーフィルター部分に量子ドットを使用したものが報告されています。

いずれのタイプもシャープな三原色の光が得られ、広色域な液晶ディスプレイとなります。

量子ドットディスプレイ:ソニーとAmazon Kindle

前述の「1.エッジライト型バックライトの導光板の入光部に量子ドット封入したガラス管を配置するタイプ」としては、2013年7月5日にSONYが世界で初めて量子ドットを使用した液晶テレビ「ブラビア X9200Aシリーズ/W900Aシリーズ」として発売しました。これには米国のQD Vision社が開発したガラス管に封入した量子ドットが使用されていました。

ちなみに量子ドットは英語でQuantum DotでQDと略記されます。QD VisionはQDを社名に冠したベンチャー企業で、当時はかなり注目されました。しかし、SONYがこの機種だけで量子ドットを使用した液晶テレビの発売を取り止め、今日現在までに量子ドットを使用した液晶テレビを発売していないこともあり、QD Visionの経営も苦境が続きました。そのような事情もあり、QD VisionはSamsungに買収されています。

「2.量子ドットを練りこんだシートをバックライトの出射面上に配置するタイプ」としては、2013年10月18日発売のAmazonのKindle Fire HDX 7に搭載されました。この機種にはNanosys社と3M社が協同開発した「QDEF」という量子ドットシートが組み込まれています。その後の量子ドットディスプレイでは、このタイプのものが主流となりました。

「3.青色LEDの発光面上に量子ドットを配置したものを光源として使用するタイプ」は、このタイプのLEDを使用するだけで、それ以外の部材を通常の液晶ディスプレイから変更する必要がないため、部材構成としては理想的でメーカーとしては採用したくなるのですが、耐久性の問題で製品化できていないようです。

量子ドットディスプレイメーカーの最新動向は、こちらの記事「量子ドットディスプレイのメーカーの最新動向」をご覧ください。


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量子ドットディスプレイの課題は?

量子ドットの主要な課題は以下の3つです。

1.量子ドットの主要な原料であるカドミウム(Cd)の毒性が高い

2.耐久性が十分ではない

3.コストが高い

最初に自社の液晶テレビに量子ドットを採用したSONYでは、ホームページでこのカドミウムの毒性について詳しい説明をしていました。もちろん、法律的には問題の無い濃度なのですが、徐々に環境規制が強化されているので、近い将来は使用できなくなる可能性があります。またカドミウムによって環境汚染等が起こってしまうと、著しくブランドイメージを損なうリスクがありますので、多くの企業が採用を躊躇している可能性があります。

そのためカドミウムを使用しない「カドミウムフリーの量子ドット」の開発も進められていますが、現状ではカドミウムを使用しないと青の光を緑および赤の光に変換する効率が低下するため、まだ普及していません。

AmazonのKindle Fireに量子ドットが搭載された時に、量子ドットの劣化が指摘されました。当時はまだ耐久性が十分ではありませんでした。その後、改良が進んでいますが、使い方によっては耐久性が不十分のようです。特に前述の青色LEDの発光面に量子ドットを置くタイプは、もっとも高い温度に量子ドットが晒されるため劣化が激しく、実用化していません。

現状では量子ドットシートが主要な製品で、複数の企業から販売されています。しかし、まだまだコスト(価格)が高いとされています。これらの事情から本格的な普及には至っていないようです。

SamsungはLGと競合し、大型テレビ向けに有機ELの研究開発を進めていましたが、歩留まりが上がらず、断念しました。ご存知のようにLGは有機ELの大型テレビを販売しています。SamsungはLGに対抗するために大型テレビに量子ドットを用いた液晶テレビに注力しました。

Samsungはマーケティング戦略として量子ドットを使用した液晶テレビを「QLED TV」と名付け、2017年から販売に力を入れています。QLEDとは、ディスプレイ業界の定義としては量子ドットに電流を流して発光させるタイプのLEDのことで、Samsungはもちろん本来はそのような意味の用語であることを知っていながら、LGのOLED TVに対抗するために、一般消費者向けにQLED TVと名付けたわけです。

ところが現時点ではSamsungのQLED TVは売れ行きはあまり良く無いようです。原因は色々と言われていますが、LGのOLED TVのライバル商品として販売するために、価格設定が液晶テレビなのにOLED TVと同じ価格帯にしたことが、消費者に割高と受け止められた可能性があります。

また量子ドットは、前述のように色域を広げる効果を狙ったものなのですが、8K・4K放送が始まる前の段階では、映像信号側が広色域に対応してなく、少ない色数で記録されている映像信号を無理やり広色域に対応させているので、ディスプレイだけ広色域にしても不自然な映像になってしまう可能性があります。8K・4K放送が始まり、広色域に対応したコンテンツが揃ってくれば、もっと評価が高まる可能性があるでしょう。

量子ドットディスプレイと有機ELおよびマイクロLEDディスプレイの動向については、こちらの記事「有機EL vs 量子ドット液晶、そしてマイクロLEDディスプレイ」をご覧ください。

まとめ

量子ドットは液晶ディスプレイの広色域化を実現する有望な技術です。まだいくつかの課題を抱えていますが、活発な研究開発が継続されています。今後の展開が楽しみです。

量子ドットディスプレイ関連については、こちらの記事「量子ドットディスプレイ・QLEDのまとめ」をご覧ください。

液晶と有機ELなどの関連記事のまとめは、記事「4Kテレビ・コンテンツ・ビデオカメラと有機EL・液晶・8K放送のまとめ」をご覧ください。

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