量子ドットディスプレイとは?デメリットとQLEDの原理などについて解説!広色域化ができる?

量子ドットディスプレイ

液晶ディスプレイはかなり高画質になりましたが、まだまだ研究開発が続けれられ、画質向上が続いています。広色域で色鮮やかなディスプレイとして注目されているのが量子ドットを使用した液晶ディスプレイです。

「量子ドット」と言われてもあまり馴染みのない言葉なのでなんだかよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。量子ドットディスプレイについて分かり易く説明します。

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量子ドットディスプレイとは?原理・特徴は?

量子ドットとは、直径数nm~20nmの大きさにした物質(主に半導体など)のことです。量子ドットはいくつかのタイプと用途がありますが、ここではディスプレイに関係のある量子ドットに話を絞ります。

ある種類の半導体は、その半導体固有のバンドギャップがあり、励起光を照射することによって高いエネルギー状態になり、そこから安定な状態に遷移する時に発光します。その時に発せられる光の波長は、バンドギャップにより決まります。発光ダイオードなどの発光波長はこのバンドギャップにより決まっています。

このような半導体を直径数nm~20nmの大きさにすると、電子がその大きさに閉じ込められるためにエネルギー準位が変化し、発光波長が変わり、さらに発光スペクトル幅もシャープになります。また発光波長も量子ドットの大きさを制御することで、ある範囲で調整することができます。

ディスプレイでは、青の発光ダイオードの光で励起して、緑および赤の光をそれぞれ発光する量子ドットが用いられます。青は元々の青色LEDの光を利用し、緑と赤については量子ドットからの光を利用するわけです。

ディスプレイでは、赤・緑・青の三原色の光を混合して白色を作り出し、さらにこれらの光強度のバランスを変えることで多くの色を作り出しています。原理的にこれらの三原色の発光スペクトルの幅が狭くなるほど、三原色を調整して作り出すことのできる色数が多くなります。

8K・4K放送(スーパーハイビジョン放送)の開始に向けて、その映像信号の全てを生かすために広色域(表示できる色数が多い)ディスプレイの開発が進められています。その有力候補が量子ドットを使った液晶ディスプレイ(量子ドットテレビ)なのです。

液晶ディスプレイは、液晶そのものは発光しない「非発光ディスプレイ」で、液晶パネルの背面に面状に発光するバックライトが配置されています。量子ドットは、液晶ディスプレイのバックライト部分に組み込まれたものがすでに製品化されました。バックライトに組み込むタイプは、大別すると以下の3つのタイプがあります。

1.エッジライト型バックライトの導光板の入光部に量子ドット封入したガラス管を配置するタイプ

2.量子ドットを練り込んだシートをバックライトの出射面上に配置するタイプ

3.青色LEDの発光面上に量子ドットを配置したものを光源として使用するタイプ

さらに学会発表レベルでは、バックライトではなく、液晶パネルのカラーフィルター部分に量子ドットを使用したものが報告されています。

いずれのタイプもシャープな三原色の光が得られ、広色域な液晶ディスプレイとなります。

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量子ドットディスプレイ:ソニーとAmazon Kindle

世界初の量子ドットテレビ

前述の「1.エッジライト型バックライトの導光板の入光部に量子ドット封入したガラス管を配置するタイプ」としては、2013年7月5日にSONYが世界で初めて量子ドットを使用した液晶テレビ「ブラビア X9200Aシリーズ/W900Aシリーズ」として発売しました。これには米国のQD Vision社が開発したガラス管に封入した量子ドットが使用されていました。

ちなみに量子ドットは英語でQuantum DotでQDと略記されます。QD VisionはQDを社名に冠したベンチャー企業で、当時はかなり注目されました。しかし、SONYがこの機種だけで量子ドットを使用した液晶テレビの発売を取り止め、今日現在までに量子ドットを使用した液晶テレビを発売していないこともあり、QD Visionの経営も苦境が続きました。そのような事情もあり、QD VisionはSamsungに買収されています。

世界初のタブレット用量子ドットディスプレイ

「2.量子ドットを練り込んだシートをバックライトの出射面上に配置するタイプ」としては、2013年10月18日発売のAmazonのKindle Fire HDX 7に搭載されました。この機種にはNanosys社と3M社が協同開発した「QDEF」という量子ドットシートが組み込まれています。その後の量子ドットディスプレイでは、このタイプのものが主流となりました。

オンチップ型の量子ドット搭載LED

「3.青色LEDの発光面上に量子ドットを配置したものを光源として使用するタイプ」は、このタイプのLEDを使用するだけで、それ以外の部材を通常の液晶ディスプレイから変更する必要がないため、部材構成としては理想的でメーカーとしては採用したくなるのですが、耐久性の問題で製品化できていないようです。

量子ドットディスプレイメーカーの最新動向はこちらの記事をご覧ください。

ディスプレイ分野の技術の進歩は速いです!

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量子ドットディスプレイのデメリット(課題)は?

量子ドットの主要なデメリット(課題)は以下の3つです。

1.量子ドットの主要な原料であるカドミウム(Cd)の毒性が高い

2.耐久性が十分ではない

3.コストが高い

最初に自社の液晶テレビに量子ドットを採用したSONYでは、ホームページでこのカドミウムの毒性について詳しい説明をしていました。もちろん、法律的には問題の無い濃度なのですが、徐々に環境規制が強化されているので、近い将来は使用できなくなる可能性があります。またカドミウムによって環境汚染等が起こってしまうと、著しくブランドイメージを損なうリスクがありますので、多くの企業が採用を躊躇している可能性があります。

そのためカドミウムを使用しない「カドミウムフリーの量子ドット」の開発も進められていますが、現状ではカドミウムを使用しないと青の光を緑および赤の光に変換する効率が低下するため、まだ普及していません。

AmazonのKindle Fireに量子ドットが搭載された時に、量子ドットの劣化が指摘されました。当時はまだ耐久性が十分ではありませんでした。その後、改良が進んでいますが、使い方によっては耐久性が不十分のようです。特に前述の青色LEDの発光面に量子ドットを置くタイプは、もっとも高い温度に量子ドットが晒されるため劣化が激しく、実用化していません。

現状では量子ドットシートが主要な製品で、複数の企業から販売されています。しかし、まだまだコスト(価格)が高いとされています。これらの事情から本格的な普及には至っていないようです。

SamsungのQLEDディスプレイ

SamsungはLGと競合し、大型テレビ向けに有機ELの研究開発を進めていましたが、歩留まりが上がらず、断念しました。ご存知のようにLGは有機ELの大型テレビを販売しています。SamsungはLGに対抗するために大型テレビに量子ドットを用いた液晶テレビに注力しました。

QLEDと言う用語は2つの意味で使われている

QLEDの本来の意味は、「量子ドット Quantum Dotを用いた発光ダイオード Light Emitting Diode」です。ディスプレイの分野では、新しい研究成果が生まれると、特許が出され、その後、学会発表・展示会発表などが行われることがほとんどです。つまり、製品になって販売されるよりもかなり前に、これらの場で専門家によって議論され、名称・専門用語が定められます。

専門用語の使われ方が乱れて、混乱してくると、学会などが主導して定義が確認・周知されることが多いようです。そのような意味で、専門家・ディスプレイ分野内でのQLEDの意味は前述のものです。これはコンセンサスが得られていますが、あえてSamsungが自社のマーケティング・ブランディングのために、CES2017から異なる意味でQLEDという用語を使用し始めました。これが混乱の原因です。

Samsungは、具体的には量子ドットシートをバックライトに組み込んだ液晶ディスプレイのことを、差別化するためにQLEDと呼び始めたのです。ディスプレイの分野ではSamsungの存在感が大きいため、SamsungのQLEDについての記事もインターネット上で多数掲載され、混乱が大きくなりました。

SamsungのQLED TVについて

Samsungは世界でのテレビの販売シェア第1位で、特に第2位のLGをライバル視しています。テレビの販売は、現在も液晶テレビが主流ですが、急激な価格下落に苦しみ、多くの日本メーカーは事業縮小・撤退などの道を選んでいます。それだけに各社のテレビのラインアップの中でも最上位(ハイエンド)の価格帯の製品が利益率が高く、ブランドイメージにも直結するので重要になります。

SamsungもLGも液晶テレビに力を入れていますが、LGは最近は有機ELテレビに特に力を入れ、自社のハイエンドのテレビを有機ELテレビにしました。そして、「液晶テレビよりも有機ELテレビの方が先進的でプレミアムなテレビ」という趣旨の宣伝を行なっています。実際、LCDとOLED(有機EL)というように言葉からして大きく異なるので、一般消費者にも「従来の液晶テレビとは異なる最先端のテレビ」という印象を与えることに成功しているようです。

SamsungはLGと同時期から有機ELの研究開発を続けてきました。スマホのGalaxyに搭載されているうような小型の有機ELの開発には成功しましたが、テレビ用の大型有機ELの開発はうまく行かず、断念しました。そのため液晶に量子ドットシートを搭載したテレビに注力し、LGに対抗することにしたわけです。

しかし、OLEDのような「これまでと違う新しさ」を伝える言葉が無いと、「従来と同じ液晶」という印象になりがちです。そこで生まれたのがOLEDに対抗するQLEDです。Qは量子ドット Quantumの頭文字です。

本来のQLEDについて

本来のQLEDは、前述のように量子ドット Quantum Dotを用いた発光ダイオード Light Emitting Diode」です。LEDと言えば一般的には無機の半導体でできたものを指します。ノーベル賞の受賞理由になった青色発光ダイオードは、窒化ガリウムの層を作り、電流を流して発光させます。この電流を流すと発光する半導体をナノレベルの微細な粒子にしたものが量子ドットです。同じ半導体の材料でも、粒子のサイズを制御することで発光波長をある範囲で調節することができます。赤・緑・青のそれぞれの波長で発光する量子ドットを用いて作ったものがQLEDです。発光スペクトルは狭く、ディスプレイの広色域を実現する技術です。

前述のSamsungの量子ドットシートは、ナノサイズの半導体(量子ドット)を含んだシートなのですが、青色の光を照射して赤と緑に発光する特性の粒子が含まれています。これは光の波長変換をする量子ドットで、QLEDで用いる電気を光に変換する量子ドットとは異なります。

いずれの量子ドットも、活発な研究開発が進められていますが、耐久性が十分ではないようで、まだ発展途上です。量子ドットシートは製品に搭載された実績がありますが、QLEDはまだ製品化されていません。今後に期待です。

日本で買える量子ドットテレビは?寿命は?

前述のようにSamsungは量子ドットテレビに力を入れていますが、同社が日本のテレビ市場に参入していませんので簡単に買うことができません。

2022年4月24日時点で、日本で量子ドットテレビを販売しているメーカーは、シャープとTCLです!

量子ドットそのものは、水や酸素により劣化しやすく、耐久性に難があります。そのため量子ドットを練り込んだフィルムの外側にバリアフィルム(封止フィルム)を貼り合わせることにより、水や酸素の侵入をある程度防ぎ、劣化を抑制しています。

このことから量子ドットの寿命を不安視する声も聞かれます。しかし、有機ELテレビやかつてのブラウン管テレビ、プラズマテレビのように、発光材料が全く劣化しないテレビというものは存在せず、ある程度以上の寿命が確保できれば製品として許容されています。

量子ドットテレビもそのような水準に到達していると考えられますが、製品の普及が始まったばかりですので、購入した人による実際の使用下での寿命についてはこれからデータが蓄積できるのでしょう。

シャープの量子ドットテレビ

シャープは、2021年12月に量子ドットテレビ「AQUOS XLED」を発売しました。そのため厳密には2021年モデルなのですが、12月に発売されたことから実質的には2022年モデルと考えても悪くはないです。


またAQUOS XLEDの55インチモデルは2022年に発売されたので、これは正真正銘の2022年モデルです!


TCLの量子ドットテレビ

TCLは、世界のテレビメーカーの中でも早期に量子ドットテレビの研究開発に取り組み、製品を発売してきました。日本でもシャープよりもかなり早い時期から製品を発売し、これまで販売を続けてきています。とにかく安い!


TCLのテレビについて詳しくはこちらの記事で紹介しています。

▼▼量子ドットディスプレイ・QLEDの情報はこちら▼▼

まとめ

量子ドットは液晶ディスプレイの広色域化を実現する有望な技術です。まだいくつかの課題を抱えていますが、活発な研究開発が継続されています。今後の展開が楽しみです。

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