サムスンの注力するQD-OLED(量子ドット有機EL)とは?

量子ドットディスプレイ

韓国サムスン電子が、2020年3月31日にテレビ用大型液晶パネル生産から撤退する方針を明らかにしました。そしてハイエンドのテレビ向けに量子ドット有機EL(QD-OLED)に注力することは2019年に発表しています。量子ドット有機EL(QD-OLED)とはどのようなものでしょうか?以下に解説します。

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サムスンのQD-OLEDとは?

サムスンが開発を進める量子ドット有機EL(QD-OLED)とは、青色有機ELパネルの上に赤色と緑色の量子ドットを画素ごとに積層した構成です。現時点でも開発中のもので、設計・使用が固まっているわけではありませんので、これを基本構成として、何らかの変更等が加えられる可能性があります。

最新の情報ではCES2020で、プライベートブースの中にさらに限られた人だけが入場できるエリアを設け、一部の招待客だけに試作品が公開されています。試作品は8Kの65インチと4Kの31.5インチQD-OLEDディスプレイで、LGのテレビ用有機パネルに比べて色鮮やかで、黒表示は少し劣るようです。

量子ドットは、これまでは液晶ディスプレイの色域を広げるために用いられていることから、技術的にも色域がカラーフィルター方式の有機ELよりも優れたものになるのは納得できます。またディスプレイの表面に量子ドットを積層することから、外光が照射されると、そこに含まれる青色光によって蛍光が放出される可能性はあります。そうなると有機ELの最大の長所である黒が「真っ黒」に表示できる特性が損なわれる可能性があります。これは最終的に販売される製品を確認しなければ、評価を下しにくいです。

現在、2021年の発売に向けて研究開発を急ピッチで進めているようです。

サムスンがQD-OLEDに至った技術の蓄積は?

現在、サムスンの最大のライバルである韓国LGが、テレビ用大型有機ELパネルをほぼ独占的に製造・販売しています。LGも液晶事業から有機EL事業にシフトすることを表明しています。

サムスンもLGも中国勢の猛攻により、液晶事業が苦境に陥ることを予想しており、かなり前から有機ELの研究開発を進めてきました。LGが赤・緑・青の発光層を積層し、白色の有機ELパネルを作製し、その上にカラーフィルターを配置してフルカラー表示を可能にする方式(カラーフィルター方式)を採用したのに対し、サムスンはスマホと同様に赤・緑・青のサブピクセルを塗り分ける方式(RGB塗り分け方式)で開発を進めました。

原理的にはRGB塗り分け方式の方が高い性能が得られることは明らかで、サムスンはスマホ向けには開発に成功し、トップシェアを築いています。しかし、テレビ向けのようにパネルが大型化すると、RGBの塗り分けが困難になり、サムスンは途中で開発を中止しました。

LGの選択した方式は、カラーフィルターを使用するため消費電力が高くなるのですが、製造が容易なため、製品化に成功しました。

サムスンは、その後、ハイエンドのテレビ向けには量子ドットシートをバックライト部分に組み込んだ液晶「QLED」を開発し、注力しました。QLEDは広色域で色鮮やかな液晶ディスプレイなのですが、多くの消費者にはこれまでの液晶テレビとの違いがわかりにくく、プレミアムなテレビとしてはLGの有機ELテレビに対して訴求力が弱いようです。

さらに中国勢の液晶パネル・テレビへの猛烈な攻勢があり、中国勢が作れないようなより高性能なテレビの開発に取り組まざるを得なくなったわけです。そこでQD-OLEDに注力しました。

前述のように、サムスンは大型の有機ELの開発経験はあり、さらに量子ドットにも力を入れてきましたので量子ドット関連技術も蓄積しています。これらの組み合わせがQD-OLEDということになります。

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量子ドットの基礎知識については、こちら記事「量子ドットディスプレイとは?原理・特徴・課題について解説!」で紹介しています。


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サムスンのQD-OLEDは成功するのか?

まず製品の性能面では、前述の外光による蛍光と量子ドットの耐久性の課題が予想されます。現状では量子ドットはシート状にしてバックライトに組み込まれて使用されていますが、その使用方法においても量子ドットの水分・熱による劣化が問題となるため、フィルムの両面からバリアフィルムを貼り付けるなどの保護が行われています。

QD-OLEDでは、インクジェット技術を用いて各画素に量子ドットを塗っていく工程が採用されるようですので、それらをどのように封止して耐久性を持たせるのか、まだ公開されていません。有機ELにおいても、長年封止技術の向上により耐久性を高めてきた開発の歴史がありますので、もしかしたらすでに解決しているのかもしれません。

事業として成功させるためには、製造コストを下げることも重要です。赤色と緑色の有機EL発光材料とカラーフィルターを使用せず、それらを作製する工程が省略できる反面、赤色のと緑色の量子ドットを使用し、それらをインクジェット技術で塗る工程が必要となります。パネル事業は、基本的には大量生産し、コストダウンするという努力をしなければなりませんので、QD-OLEDが販売開始して最初の1〜2年ぐらいの動向を冷静に分析すれば、かなりのことがわかってくると予想されます。

まとめ

サムスンがテレビ向け大型液晶パネル事業から撤退し、今後のハイエンドテレビ事業の中核とする量子ドット有機EL(QD-OLED)について解説しました。近い将来に試作品が一般公開されると思いますので、それらを確認できましたら追記・修正していきます。

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