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生分解性プラスチックの課題とメーカーの事情は?

プラスチック

マイクロプラスチックによる海洋汚染の深刻さが注目されるようになり、その解決方法として生分解性プラスチックの使用に期待が寄せられています。

すでにいくつかの生分解性プラスチックが製品化され、販売されています。これらを用いたいろいろな製品も販売されていますので、すぐに利用できますが、これによりプラスチックのゴミ問題を解決できるのでしょうか?以下に紹介します。

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生分解性プラスチックのまとめ!メリットとデメリットは?

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生分解性プラスチックの課題

従来のプラスチックの使用を止めて、生分解性プラスチックをその代わりに使用することを考えた場合、以下のようないくつかの課題があります。

1.価格が高い

生分解プラスチックの種類と比較対象とする従来のプラスチックの種類にもよりますが、現状では生分解プラスチックの価格はおおよそ3倍以上となるようです。このことが普及の最大の課題となっています。

2.「生分解性」以外の特性が優れているわけではない

プラスチックは成形していろいろな形状のプラスチック製品としますが、機械強度や加工性などの特性が従来のプラスチックに比べて必ずしも優れているわけではありません。用途によってはこのこと課題となる場合があります。

3.耐久性に劣る

生分解性とは、自然界の微生物によって、最終的には水と二酸化炭素に分解される特性です。したがって、生分解性プラスチックで作った製品は、時間とともに分解しやすい特性が長所なのですが、用途によっては耐久性が無いことになり、利用できないことがあります。

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生分解性プラスチックが普及するとゴミが増える?

現状では、生分解性プラスチックが急速に普及するとゴミが増えてしまう可能性があります。そもそもプラスチックによる環境汚染を解決する切り札として期待されているものであるのになぜでしょうか?

生分解性プラスチックは必ずしも海洋中で分解されるわけではない

これまでも何度が生分解性プラスチックがブームになり、注目されたことがありました。今回は、マイクロプラスチックによる海洋汚染がきっかけになっています。

これまで開発されてきたものは、農業用で使えるように、土壌中で微生物に分解されるようなものもあります。つまり、海洋中で必ずしも分解されるわけではないということです。

微生物に分解されるということは、そこに生息する微生物の種類と数、さらには微生物がプラスチックを分解するための温度などの諸条件が重要になります。生分解性プラスチックさえ使えば、どんな環境下でも分解すると考えるのは間違いです。

生分解性プラスチックを適切に分解させるためのシステムの構築が必要

使用済みのPETボトルを回収してリサイクルするシステムを構築し、一般市民や事業者、行政組織などがそのシステムの運用に協力しないとリサイクルが上手くできないことと同様に、生分解性プラスチックについてもシステム構築が必要です。

前述のように生分解性プラスチックは、どのような環境下でも微生物に分解されるわけではないので、生分解性プラスチックを分解するための施設を作り、そこに使用済みの生分解性プラスチックを集める必要があります。その際に、従来のプラスチックと分別する必要がありますので、かなり難易度が高いでしょう。法律の整備をしないとまともに稼働しないと思われます。

プラスチックの投棄を助長する可能性がある

「生分解性」というイメージから、環境中に投棄してもすぐに分解されるという誤解を与え、投棄を助長する可能性があります。ほとんどの生分解性プラスチックは、分解されるような条件下でも完全に分解されるまで数ヶ月程度時間を要します。つまり、投棄しても大丈夫と誤解されると、適切に回収して処理する必要がないと認識され、到るところで生分解性プラスチックが散乱する可能性があります。それは従来のプラスチックの投棄も助長することになるでしょう。

LCAなどの観点から検証する必要がある

生分解性プラスチックが良いものであると仮定しても、それらを製造するためにどのような原料からどのような製造方法で作り、どのような廃棄物が生じるのか、どのような環境負荷があるのかをフェアに検証する必要があります。


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生分解性プラスチックのメーカーの事情

前述の生分解性プラスチックの問題点を考慮した時に、生分解性プラスチックを使用することが本当に環境にとって良いことなのか慎重に検証すべきという結論にならざるを得ません。

農業用資材のように、使用後に畑の土壌中で完全に水と二酸化炭素に分解されるような用途は比較的安心です。従来のプラスチックと適切に分別されずに、一緒に焼却処理されたらほとんど意味がありませんし、埋め立てられたりするようならば、必ずしも微生物により完全に水と二酸化炭素に分解されない可能性が高いです。

メーカーの事情を考えると、生分解性プラスチックの事業で売上・利益を出せなければ事業を続けることができません。メーカーが事業を続けられなければ普及することはありません。また事業がある程度軌道に乗りそうになれば、本当に意味で環境に良いかという最も重要なことが曖昧なまま販売促進のみに注力する可能性があります。

このことを批判することは簡単なのですが、営利企業であるメーカーの事情としては止むを得ない部分もあります。引き合いに出して申し訳ないですが、例えば自動車メーカーが注力するハイブリッドカーや電気自動車が本当に環境のために良いものなのか、厳しく検証されるよりも、販売促進が経済のためにも重要となってしまうことと同様です。

一つだけ明らかなことは、マイクロプラスチック問題の抑制を本気の考えれば、一番効果があるのはプラスチックを使用しないことです。プラスチックを使用しなければ、マイクロプラスチックも増えませんし、プラスチックを製造するための資源も消費されませんので、環境に最も良いことは明らかです。

つまり、生分解性であるからと言って、どんどん生分解性プラスチックを製造し、浪費し続けることは環境に良くないことで、何よりも使用量削減に取り組むべきです。前述の自動車の例でも同じことで、環境のことを考えれば自動車の生産台数を増やさず、むしろ減らし、さらに自動車を極力利用しない方が良いことは明らかです。

しかし、生産量と消費量を減らすことは、ほとんどの場合は産業の停滞・経済規模の縮小に繋がりますので、産業界も各国政府も積極的に推進しない事情があります。「生分解性プラスチックをたくさん使うこと」が環境に良いことと勘違いしないように注意する必要があるでしょう。

まとめ

生分解性プラスチックの課題と問題点について紹介しました。環境問題は複雑です。短絡的に考えず、少し疑いながら検証した方が良いでしょう。

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