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有機EL基板用ポリイミドはワニスとフィルムがある?スマホ用はガラスからポリイミドフィルムへ!

有機EL

AppleがiPhone Xに有機EL(OLED)ディスプレイを搭載して以来、多くのスマホメーカーがハイエンドモデルに有機ELディスプレイを採用するようになりました。スマホ用のディスプレイは、液晶から有機ELにシフトする傾向が明らかになっています。

そして、スマホ用有機ELディスプレイの基板にはポリイミドフィルムが採用され始め、フレキシブル化が進んでいます。

ポリイミドとはどのようなものでしょうか?なぜポリイミドが使われるのでしょうか?

またポリイミド基板はワニスとして供給されることが主流ですが、フィルムとしての供給も始まるようです。

これらについて以下に解説します。

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有機ELの基板に使われているポリイミドとは?

ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称です。高分子は、一般にモノマーと呼ばれる低分子量の有機化合物が、多数化学反応して結合し、高分子量の有機化合物になったものです。モノマーに対してポリマーとも呼ばれます。

特定のモノマーが多数化学反応してつながっていくため、ある特定の化学構造の単位が繰り返し高分子中に含まれることとなります。そのためこの単位のことを繰り返し単位と言い、ポリイミドの場合はその中にイミド結合が含まれるということです。

ポリイミドは、数ある高分子の中で最高レベルの高い耐熱性、強い機械強度、化学的な安定性を有しています。

2010年に、独立行政法人宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)および月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC/JAXA)が開発した小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の「太陽帆」に使用されたのもポリイミドで、宇宙空間という極めて過酷な環境下で、さらに失敗が許されない実証機の打ち上げという場面で使用されたことからも話題となりました。

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有機EL基板になぜポリイミドが使用されるのか?

そもそもなぜポリイミド基板がガラス基板の代替として使用されるのでしょうか?

まず現状では軽量化・薄型化・優れた耐衝撃性のメリットが大きいでしょう。ハイエンドモデルのiPhoneの有機ELパネルの基板にポリイミド基板が利用されていますが、スマホではこれらのメリットが重要です。

さらにもっとも注目されているのは、曲げられるという特性です。Samsung Galaxy Z Flip 5Gのように、すでに有機ELディスプレイ画面を折り曲げられるフォルダブルスマホが発売されています。今後、徐々にフォルダブルスマホ、さらにフォルダブルノートパソコンが増えていくと予想されています。

上記のメリットを狙うだけならばポリイミド以外のポリマー(プラスチック)基板でも良いように思いますが、有機EL基板にはTFT(薄膜トランジスタ)を形成する必要があり、TFTの製造工程で約500℃の高温に耐えられることが必須となります。

さらに室温から500℃まで加熱し、その後再度室温まで冷却しますが、その間の熱膨張などによる体積変化もある程度以下する必要があります(*この特性は通常は線膨張係数で表します)。この高い耐熱性と極めて低い線膨張係数をいずれも満足するポリマーは、現在知られているものではポリイミドだけです。

以上の理由から有機EL基板にはポリイミドが選ばれています。

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有機EL基板用ポリイミドはワニスとフィルムがある?

ポリイミドは耐熱性と寸法安定性に優れるポリマーですが、不溶不融であるため工業的な成形加工がし難いポリマーです。

そのため基板状に成形するためには、ワニスと呼ばれるポリイミドの前駆体を含んだ溶液を平滑な基板上に広げ、加熱してイミド化反応を進め、残存する溶媒等と除去します。最後に基板から得られたフィルム状のポリイミドを剥がします。

有機ELの基板としてポリイミドフィルムを使用するためには、フィルムの表面の粗さが少なく平滑であること、ダストなどの異物がほとんどないことなどの厳しい要求があります。これらをクリアするために、純度の高いポリイミドのワニスを、有機ELパネルメーカーがその製造工程内で使用し、前述の工程で製造する方法が採用されています。

しかし、この方法は、すでにガラス基板を使用して有機ELパネルを製造しているメーカー(あるいは生産ライン)から見ると、前述の工程を行うための設備を追加しないとポリイミド基板に代替できないことを意味します。

したがって、多くのディスプレイ部材のように、高品質のポリイミドフィルムを供給してくれるメーカーがあれば、パネルメーカーにもメリットがあるということになります。もちろん、ポリイミドフィルムを有機ELパネルの生産ライン中で基板として使用するために、新たな設備の導入が全く無いわけではないですが、前述のワニスから作る場合に比べれば通常は軽微なものとなります。

有機EL基板用ポリイミドフィルムを供給する注目メーカーは?

スマホ用の有機ELパネルは、韓国Samsungのほぼ独占です。Samsungへは、宇部興産との合弁会社であるSUマテリアルスがポリイミドのワニスを供給しています。韓国LGにはカネカがポリイミドを供給しています。

現在、注目されているのが東洋紡の東洋紡の「ゼノマックス®」です。室温から500℃まで熱膨張係数が約3ppm/℃と一定で、ポリマーフィルムとして世界最高レベルの寸法安定性を有しています。長瀬産業株式会社と東洋紡の合弁により、高耐熱性ポリイミドフィルム「ゼノマックス®」の生産・販売会社「ゼノマックスジャパン株式会社を2018年4月2日に設立し、事業を展開しています。

まとめ

有機EL用基板として普及が進むポリイミドについて、ワニスとフィルムについて紹介しました。これまで日本メーカーが培ってきた高いポリマーの技術が花開いています。

有機ELの印刷および蒸着方式による製造方法の課題についてはこちらの記事で紹介しています。

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