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生分解性プラスチックはなぜ普及しないのか?生産量は増える?

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プラスチックは私たちの日々の生活を便利にしてくれています。ペットボトルに入った飲料を飲む人は多いですし、買い物をするとプラスチックのレジ袋に商品を入れてくれたりします。プラスチックは材料として耐久性に優れているのですが、それが環境中に放出されると長期で残留してしまうため深刻な問題となっています。

そのため環境中で分解される生分解性プラスチックが注目されていますが、普及があまり進んでいないようです。なぜでしょうか?以下に解説します。

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生分解性プラスチックはなぜ普及しないのか?

国際的に深刻となるプラスチックの環境汚染を解決するために、大手化学メーカーが生分解性プラスチックの研究開発を進めています。いくつかの生分解性プラスチックについては、増産されています。それだけ生分解性プラスチックに対する期待が大きいわけですが、世界で使用されているプラスチックの総量に比べれば微々たるもので、本格的普及はまだまだ先の話です。

生分解性プラスチックはなぜ本格的に普及しないのでしょうか?

一般的なプラスチックに比べてかなり価格が高いことがその原因の1つですが、それだけではありません。生分解性プラスチックの種類が限られており、従来から使用されているプラスチックを代替できる特性を発揮できるものが少ないということもあります。生分解性プラスチックの回収し、リサイクルシステムに組み込むという点でも、まだこれから取り組まなければなりません。

さらに詳しく解説します。

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生分解性プラスチックですべてを代替できない

現在、日本では、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン、ABSなどの多様なプラスチックが利用されています。適材適所というように、それぞれの種類ごとに特性や価格などの点で優れた特徴があり、各用途にもっとも適したプラスチックが使用されています。これらは生分解性プラスチックではありません。

生分解性プラスチックではなく、これらのプラスチックが優先的に使用されている理由は、価格・特性の点で各用途においてより優れているからです。生分解性プラスチックは、環境中に放出しても水と二酸化炭素に分解されるという特性にもっとも魅力があるのですが、価格がかなり高いことが課題です。さらに用途によっては、必要な特性(機械強度、耐熱性など)が実現できないこともあり、使いたくても使えない場合もあります。

したがって、現時点ですべてのプラスチックを生分解性プラスチックで代替することはできません。


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生分解性プラスチック用の分別処理が必要

日本では、多大な努力によってプラスチックのリサイクルシステムを構築してきました。諸外国と比較しても非常に優れたもので、廃プラスチックの有効利用率は2016年に84%に達しています。国内のプラスチックの生産量は減少傾向にあり、この有効利用率は向上してきました。しかし、冒頭で述べた中国の廃プラスチックの輸入禁止措置により、廃プラスチックのリサイクルシステムの改善が要求されています。

プラスチックのリサイクルは、主にマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つからなります。この中でマテリアルリサイクルが、廃プラスチックを単純に再利用するリサイクルですので、環境負荷的にはもっとも望ましいとされています。サーマルリサイクルは焼却しますので二酸化炭素放出に繋がり、プラスチックとしては再利用できませんし、ケミカルリサイクルは、高品質のプラスチックに生まれ変わらせることができますが、化学反応を起こさせるためにエネルギーを必要とするからです。

ところが、マテリアルリサイクルに回されていた廃プラスチックの多くが、中国などの他国に輸出されていたわけで、要するに国内で発生した廃棄物を他国に押し付けていたわけです。もちろん、それらの廃棄物を引き受けてビジネスをしていた海外企業が存在したわけで、権力で押し付けていたわけではありません。さらにそれらの廃棄物は、何らかの状態で汚染されているものもあったようで、中国などはその環境への影響を懸念して輸入を禁じたわけです。

このようにして輸出できなくなった廃プラスチックが国内に滞留し、廃プラスチックの受け入れができなくなりつつあります。仮にすぐに生分解性プラスチックの使用量を増やしたとしても、この問題は解決しません。現時点では生分解性プラスチックのみを回収するルートが確立されて無く、通常のプラスチックと混ぜられてしまうからです。生分解性プラスチックと言えど、コンポストなどの生分解を促進する環境下に置かないと短期間で分解しません。また前述のように、従来からのプラスチックを大幅に生分解性プラスチックで代替することは現時点ではできません。

生分解性プラスチックを大規模に導入するには、PETボトルの回収システムのように、誰もが生分解性プラスチックと認識できるようなもので、それ専用の回収システムを導入しないといけないでしょう。現時点ではそのような用途がなく、それほどの導入量にはなっていません。

畑の表面を覆うマルチシートなどのように、使用後にそのまま回収しなくても分解してなくなるような用途から、生分解性プラスチックの導入を増やしていくことが現実的でしょう。

生分解性プラスチックの課題

従来のプラスチックの使用を止めて、生分解性プラスチックをその代わりに使用することを考えた場合、以下のようないくつかの課題があります。

1.価格が高い

生分解プラスチックの種類と比較対象とする従来のプラスチックの種類にもよりますが、現状では生分解プラスチックの価格はおおよそ3倍以上となるようです。このことが普及の最大の課題となっています。

2.「生分解性」以外の特性が優れているわけではない

プラスチックは成形していろいろな形状のプラスチック製品としますが、機械強度や加工性などの特性が従来のプラスチックに比べて必ずしも優れているわけではありません。用途によってはこのこと課題となる場合があります。

3.耐久性に劣る

生分解性とは、自然界の微生物によって、最終的には水と二酸化炭素に分解される特性です。したがって、生分解性プラスチックで作った製品は、時間とともに分解しやすい特性が長所なのですが、用途によっては耐久性が無いことになり、利用できないことがあります。

生分解性プラスチックが普及するとゴミが増える?

現状では、生分解性プラスチックが急速に普及するとゴミが増えてしまう可能性があります。そもそもプラスチックによる環境汚染を解決する切り札として期待されているものであるのになぜでしょうか?

生分解性プラスチックは必ずしも海洋中で分解されるわけではない

これまでも何度が生分解性プラスチックがブームになり、注目されたことがありました。今回は、マイクロプラスチックによる海洋汚染がきっかけになっています。

これまで開発されてきたものは、農業用で使えるように、土壌中で微生物に分解されるようなものもあります。つまり、海洋中で必ずしも分解されるわけではないということです。

微生物に分解されるということは、そこに生息する微生物の種類と数、さらには微生物がプラスチックを分解するための温度などの諸条件が重要になります。生分解性プラスチックさえ使えば、どんな環境下でも分解すると考えるのは間違いです。

生分解性プラスチックを適切に分解させるためのシステムの構築が必要

使用済みのPETボトルを回収してリサイクルするシステムを構築し、一般市民や事業者、行政組織などがそのシステムの運用に協力しないとリサイクルが上手くできないことと同様に、生分解性プラスチックについてもシステム構築が必要です。

前述のように生分解性プラスチックは、どのような環境下でも微生物に分解されるわけではないので、生分解性プラスチックを分解するための施設を作り、そこに使用済みの生分解性プラスチックを集める必要があります。その際に、従来のプラスチックと分別する必要がありますので、かなり難易度が高いでしょう。法律の整備をしないとまともに稼働しないと思われます。

プラスチックの投棄を助長する可能性がある

「生分解性」というイメージから、環境中に投棄してもすぐに分解されるという誤解を与え、投棄を助長する可能性があります。ほとんどの生分解性プラスチックは、分解されるような条件下でも完全に分解されるまで数ヶ月程度時間を要します。つまり、投棄しても大丈夫と誤解されると、適切に回収して処理する必要がないと認識され、到るところで生分解性プラスチックが散乱する可能性があります。それは従来のプラスチックの投棄も助長することになるでしょう。

LCAなどの観点から検証する必要がある

生分解性プラスチックが良いものであると仮定しても、それらを製造するためにどのような原料からどのような製造方法で作り、どのような廃棄物が生じるのか、どのような環境負荷があるのかをフェアに検証する必要があります。

生分解性プラスチックのメーカーの事情

前述の生分解性プラスチックの問題点を考慮した時に、生分解性プラスチックを使用することが本当に環境にとって良いことなのか慎重に検証すべきという結論にならざるを得ません。

農業用資材のように、使用後に畑の土壌中で完全に水と二酸化炭素に分解されるような用途は比較的安心です。従来のプラスチックと適切に分別されずに、一緒に焼却処理されたらほとんど意味がありませんし、埋め立てられたりするようならば、必ずしも微生物により完全に水と二酸化炭素に分解されない可能性が高いです。

メーカーの事情を考えると、生分解性プラスチックの事業で売上・利益を出せなければ事業を続けることができません。メーカーが事業を続けられなければ普及することはありません。また事業がある程度軌道に乗りそうになれば、本当に意味で環境に良いかという最も重要なことが曖昧なまま販売促進のみに注力する可能性があります。

このことを批判することは簡単なのですが、営利企業であるメーカーの事情としては止むを得ない部分もあります。引き合いに出して申し訳ないですが、例えば自動車メーカーが注力するハイブリッドカーや電気自動車が本当に環境のために良いものなのか、厳しく検証されるよりも、販売促進が経済のためにも重要となってしまうことと同様です。

一つだけ明らかなことは、マイクロプラスチック問題の抑制を本気の考えれば、一番効果があるのはプラスチックを使用しないことです。プラスチックを使用しなければ、マイクロプラスチックも増えませんし、プラスチックを製造するための資源も消費されませんので、環境に最も良いことは明らかです。

つまり、生分解性であるからと言って、どんどん生分解性プラスチックを製造し、浪費し続けることは環境に良くないことで、何よりも使用量削減に取り組むべきです。前述の自動車の例でも同じことで、環境のことを考えれば自動車の生産台数を増やさず、むしろ減らし、さらに自動車を極力利用しない方が良いことは明らかです。

しかし、生産量と消費量を減らすことは、ほとんどの場合は産業の停滞・経済規模の縮小に繋がりますので、産業界も各国政府も積極的に推進しない事情があります。「生分解性プラスチックをたくさん使うこと」が環境に良いことと勘違いしないように注意する必要があるでしょう。

まとめ

生分解性プラスチックの課題と問題点について紹介しました。環境問題は複雑です。短絡的に考えず、少し疑いながら検証した方が良いでしょう。

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